トマトを栽培する上で必ずと言っていいほど悩まされるのが裂果でしょう。
せっかく果実が大きくなって赤くなったのに、割れてしまって売り物にならなかったり、すぐに腐ってしまったりと悲しい思いをしましたよね。
近年トマトを作りにくい気候に変わりつつありますが、そんな中でもトマト農家の私は日々裂果対策を実践し続けています!
一生懸命作ったトマトがバキバキに割れてしまうことがないように、6つの裂果対策をまとめてみました!
トマトの裂果(割れ)の原因
まず最初になぜ裂果するのか、トマトが割れてしまう原因をはっきりさせましょう。
裂果の主な原因としては、以下の4つが上げられます。
- 高温
- 日焼け
- 土壌水分の急激な変化(トマトが吸い上げる水の量の変化)
- 温度差
これらの原因の全てが当てはまって裂果に繋がっているとは限りません。
自分の育てているトマトには何が当てはまって原因となっているのか考えてみましょう。
この4つの原因がなぜ裂果を引き起こしているか少し説明していきます。
高温
トマトの生育に適している気温は、実はあまり高くありません。夏場でも25度前後が一番ストレスなく生育してくれます。
しかし、30度以上の時間が長く続くと、トマトは「高温障害」を起こしてしまいます。
暑さや日光による高温障害でヒビが入りやすい果皮になってしまい、裂果を引き起こします。
日焼け
高温障害と似ていますが、直射日光が当たり続けることでも裂果に繋がります。
強い日差しが果実に当たると、その部分の果皮が乾燥して水分が少なくなり、硬くなります。
硬くなった果皮は果実が肥大した時に肥大に合わせて伸びることができず、パキッと割れてしまうのです。
土壌水分の急激な変化(トマトが吸い上げる水の量の変化)
トマトは水を吸って果実を肥大させています。常に一定の水分を吸い続けられることが理想です。
ですが、乾燥した土壌で果実の肥大ペースが遅い時に急激に水を与えたらどうなるでしょうか。
吸い上げた水が急に果実に流れ込み、今まで肥大に合わせて伸びていた果皮が急な肥大に間に合わずに割れてしまいます。
土壌水分の変化だけではなく、天候や環境によってトマトが水を吸い上げにくい状態から急に元気よく水を吸いだした時にも同じ現象が起きます。
温度差
夏に栽培しているトマトが秋の気温が低い時期に裂果するのはこれが原因です。
寒くなってくると植物が早く次の世代の種を残そうとするため、果実が割れるという生理現象が起きます。
特に秋は、昼夜の温度差が大きいため、この生理現象が起きやすいです。
トマトの裂果対策① 遮光
裂果の原因を知れたところで、ここからはその対策方法について紹介していきます。最初の裂果対策は、「高温」と「日焼け」に効果がある遮光です。
農業用の遮光シートをハウスの天井にかけたり、家庭菜園で雨よけがしてある場合にはその上にかけることで強すぎる日射をカットし、温度の上昇も多少防ぐことができます。
遮光自体は簡単にできるのですが、注意点が一つだけあります。それは、トマトが「好光性」の植物ということです。
日射量が多い方が元気に育つので、遮光をするのは日差しが強い夏にのみ行ってください。
日射量の少ない時期に遮光をしてしまうと、裂果防止どころかトマトの生育に影響を与えてしまいます。
日射量が増える時期に遮光をし、日焼けや高温の心配がなくなればすぐに遮光シートを下ろしましょう。
トマトの裂果対策② 潅水量を急に変えない
2つ目の対策は、潅水量を急に変えないことです。土壌水分の急激な変化を防ぎます。
例えば、今までは1日にトマト1株当たり1リットルの水を与えていたのに、急に倍の2リットルの水を与えたとします。
すると、トマトも急に大量の水を吸い上げるので、果実が急肥大して皮が弾けてしまうのです。
水の量を増やしたい場合は、急に増やすことは避けましょう。
急に潅水量を増やすとどうしても裂果に繋がってしまいます。
1リットルから2リットルに水の量を増やしたい場合は、少しずつ数日間かけて増やしていくことをおすすめします。
乾燥した土に多く水を流すのが一番危険です!
トマトの裂果対策③ 雨水が入らないようにする
3つ目の対策は、潅水量を急に変えないことと似ていますが、雨水が入らないようにすることです。
雨水が畑に入ると、急に水の量が増えるので果実が割れてしまいます。
ハウスで栽培している場合はその心配は少ないと思いますが、雨よけをしていない家庭菜園の場合は、簡易的な小さい雨よけハウスを建てると良いでしょう。
また、果実に雨が当たることが原因で裂果することもあります。雨に当たると、果皮がざらざらになって傷のようになり、そこからさらに水が入ることで裂果になります。
トマトの裂果対策④ 適度な樹勢を保つ
4つ目の対策は、適度な樹勢を保つことです。適度な樹勢とは、強すぎず弱すぎずと難しいですが、頑張ってみましょう。
まず樹勢が強すぎる場合には、トマトが生育の制御をできないようになっているといった感覚で良いかと思います。それによって果実もうまく肥大できずに裂果します。
樹勢が弱い場合は、葉っぱが大きく育たずに小さくなっていると思います。この状態では、果実に影を作ることができないので、直射日光が当たって「日焼け」に繋がることが考えられます。
樹勢は強くしすぎず、トマトに影を作れる程度の葉っぱを作れると理想的な生育状態と言えるでしょう。
トマトの裂果対策⑤ 誘引方法を変える
5つ目の対策は、誘引方法を変えることです。これは意識してできる場合と難しい場合があるかと思います。
夏のトマト農家さんは、基本的に直立で真っ直ぐ誘引していく方法と、斜めに誘引していく方法のどちらかを取っています。
真っ直ぐ誘引してくよりも、斜めに誘引していく方が隣の樹の葉が影になり、直射日光を受けにくくなるということです。
隣の樹との間隔によっては難しい場合もあるので、できればやってみるくらいの考えでいいかと思います。
トマトの裂果対策⑥ 裂果に強い品種を使う
最後の対策は、裂果に強い品種を使うことです。トマトは、品種によっては全くと言っていいほど割れないものもあります。
最近登場したばかりの新しい品種である「麗月」は裂果にとても強く、近年の異常なほど暑い夏でも耐え切ることができます。
麗月ほどではなくとも割れにくいと評価されている品種に変えることで、多少は裂果を減らすことができるでしょう。
ただ、裂果が無くなるわけではないので、他の対策方法と重ねて実施するとより効果的です。
まとめ【裂果対策を実施してトマトの割れを減らそう】
トマトを栽培していて必ずと言っていいほど悩まされる「裂果」の対策をまとめてみましたが、実践できそうなことはありましたか?
全てをやろうと思うと難しいですが、自分が育てているトマトがなぜ割れてしまうのか原因が分かれば、最低限の対策で被害を抑えられます。
まずはトマトをよく観察して考え、ピッタリの対策方法を実施してみてください。
私も夏秋トマト農家なので、裂果に負けないような逞しいトマトを育てていきたいと思います!