「トマトの収量が落ちてきたなぁ」
「病気の株も多くなってきた気がする」
「最初はもっと育てやすかったのにな」
これらは全て、『連作障害』による症状かもしれません。
連作障害と聞いて、症状や対策はぱっと思いつきますか?
思いつかないのであれば、今すぐこの記事を読んで連作障害について知識を付けてください!
なぜなら、連作障害はトマトを育てる上で必ずつきまとう厄介者であり、対策をしなければ、あなたの畑では今以上にトマトが育てられなくなるからです。
ですが、対策がまとめられているこの記事を読めば、その心配がなくなります。
記事の内容は次の通りです。
- 連作障害によってトマトにどんな症状が起こるのか
- トマトは連作障害になりやすい
- 連作障害に負けない6つの対策
- 記事を書いている私は、全国有数の大きなトマトの産地でトマトを育てています
- 産地内での栽培面積・収量は共に上位10%に入り、トマトに関する確かな知識と技術を持っています
連作障害の症状とは?トマトには何が起こるのか?
同じ植物を同じ場所で育て続けることを「連作」と言います。
そして、連作によって起こる生育障害が「連作障害」です。
トマトは毎年同じ畑で育てていると、土の中の病原体や虫が増えていくので、収量が落ちていき、病気にもなりやすくなってしまいます。
連作障害には「土壌病害」「線虫害」「生理障害」の3つがあり、症状も様々です。
それぞれ、トマトにはどんな症状が起きるのか説明していきます。
土壌病害
土の中に生息している病原体が、作物の根や茎などから侵入し、増殖して発症する病気のことを土壌病害と言います。
同じ作物を育て続けることによって、病原体の数が増え、土壌病害にかかりやすくなるのです。
トマトの代表的な土壌病害には、「青枯れ病」と「半身萎凋病」などがあります。
- 急に株全体が青い葉のまましおれる
- 数日経つと枯死し、次々と発病株が増える
- 茎や根を切断すると変色しており、水に浸けると乳白色の粘液が出る
- 高温多湿の時期に多発する(梅雨入り~10月頃まで)
- 初期は、下の葉が部分的にしおれて巻き上がる
- しおれた部分が徐々に黄色くなってくる
- 徐々に症状が広がり、何日もかかっていずれは枯死する
- 茎を切ると、薄茶色に変色している
- 25度前後で多湿だと多発する(真夏の高温期は発症しずらい)
線虫害
土の中にいる「線虫」という小さな虫が増えて起こる障害で、虫による症状ですが、病気と同じ扱いです。
線虫害は、土中の微生物のバランスの崩れで起こる障害であり、連作するほどバランスが崩れて症状が加速します。
トマトの場合、「ネコブセンチュウ」による被害が代表的で、その名の通り根にコブができます。
ネコブセンチュウによる寄生が多いと、根がコブだらけになり、根の働きが悪くなってしまうのです。
トマトの株を抜いた時に、根がボコボコになっていたら、ネコブセンチュウによる線虫害を疑いましょう。
生理障害
トマトを毎年同じ場所で育てていると、毎回特定の栄養が使われて減っていったり、肥料の与えすぎで増えすぎたりします。
すると、栄養の過不足によってトマトの生育に障害が出る「生理障害」が起きるのです。
また、気温や日射量の変化によるストレスでも生理障害は発生します。
- 窒素過剰 ➡ 過繁茂(樹が茂りすぎて生育が抑制される状態)
- カルシウム欠乏 ➡ 尻腐れ果の発生
- 低温にあたる ➡ 窓あき果
トマトは連作障害が起きやすい
連作をすることによって、様々な連作障害が発生しますが、トマトは特に連作障害が起きやすい作物です。
トマトは一度育てた畑に、3~4年以内に植えると、連作障害が起きやすくなります。
3~4年の間、同じ畑で育てないのであれば問題ありませんが、毎年育てるのであればトマトは必ず連作障害の対策をしてください。
トマトに限らず、「ナス科・ウリ科」などは、連作障害に注意が必要になります。
➡トマトと同じナス科の他の植物は「トマトは何科の植物か?」の記事をご覧ください。
「トマトは連作障害になりやすいなら何をしたらいいの?」
と思ったあなたは、この次から紹介する、「連作障害の対策」について読み進めてみてください。
トマトの連作障害の対策【プランターで育てる】
トマトの連作障害の原因は、「連作によって土の栄養バランスが崩れたり、病原体や虫が増えたりするから」と書きました。
つまり、毎年新しい土で育てれば、病原体や虫が増えていくことはないのです。
畑の土を変える訳にはいかないので、新しい土を使うのであれば、プランターでの栽培が適しています。
➡【プランターでのトマトの育て方】プランター栽培は、こちらの記事を参考にしてみてください。
プランターでトマトを育てると、毎年新しい培養土を購入して使うので、前年の病原体や虫を持ち越す心配がありません。
ただし、1年使った培養土は処分し、プランターをきれいに洗った上で、新しい培養土を使うようにしましょう。
トマトの連作障害の対策【輪作する】
トマトの連作障害は、3~4年以内に連続して植えると起こりやすいので、同じ場所に連続して植えないことで対策ができます。
同じ場所に植えないように、別の作物をローテーションして育てることを「輪作」と言います。
輪作の方法は、まず畑を4~5か所に分け、それぞれ別の作物を植えます。
なるべく同じ科の作物が被らないようにすると、より効果的です。
※例【トマト(ナス科)、キュウリ(ウリ科)、キャベツ(アブラナ科)、枝豆(マメ科)、タマネギ(ヒガンバナ科)など】
次の栽培からは、前作と違う作物が植えられるように、ずらして植えます。
すると、最初にトマトを植えた場所に次にトマトの番が来るのは、4~5年後になります。
トマトの連作障害を避けるには、3~4年の期間が必要になりますが、この方法ならその期間を空けることができるのです。
トマトの連作障害の対策【畑に色々な種類の野菜を植える】
輪作とは少し違いますが、畑にトマト以外にも様々な種類の野菜を植えることも効果があり、「コンパニオンプランツ」と言います。
作物同士でなくとも、邪魔にならない程度であれば、雑草をあえて残すのも手です。
同じ畑に複数の植物を植えることで、土壌中の栄養バランスの崩壊を防ぐことができるのです。
植える植物の組み合わせは何でも良いわけではなく、トマトであれば、ニンニクやネギを一緒に植えると病気の予防効果が期待できます。
トマトの連作障害の対策【栄養バランスの良い土作りをする】
トマトの連作障害は、土の中の栄養分が偏ったり、微生物の働きが減ったりすることでも助長されます。
微生物は、土の中のあらゆるものを循環させ、環境を整えてくれます。
そして、いわゆる「良い土」を作ってくれるのです。
栄養分を偏らせず、微生物の働きを活発にさせるには、次の2点が効果的です。
- トマトに必要な分だけ肥料を入れて土に余らせない
- 堆肥や刈草などの有機物を畑に入れる
肥料は、トマト専用の肥料を購入し、記載されている通りの量を使用しましょう。
堆肥や刈草などの有機物があると、微生物が分解しようとして動きが活発になります。
有機物とは、簡単に説明すると「自然の中にあるもの」となります。
生きているもの、生きているものから出るもの、は有機物であり、有機物を入れることによって「良い土」となるのです。
トマトの連作障害の対策【病気に抵抗性のある接ぎ木苗を植える】
トマトを育てる時は、接ぎ木苗を使っていますか?
➡接ぎ木苗については「トマトの苗の選び方」の記事でも解説されています。
接ぎ木苗を使うことで病気の抵抗性ができ、連作障害が起きていても、病気になりにくくなります。
トマト農家では毎年同じ畑で栽培することが多いのですが、連作障害による病気で全滅してしまうことはありません。
それは、必ず接ぎ木苗を使って病気の予防をしているからです。
接ぎ木苗の使用は多くのメリットがあるので、連作障害が起きていないとしても、必ず接ぎ木苗を植えるようにしてください。
トマトの連作障害の対策【土壌消毒をする】
最後に紹介する方法は、家庭菜園では難しいかもしれませんが、効果が高いので紹介します。
その方法とは、畑を薬剤や太陽光による高温で消毒し、病原体や虫を激減させる「土壌消毒」と呼ばれる方法です。
農家ではよく行う消毒方法ですが、家庭菜園ではあまり馴染みのないことのはずです。
土壌消毒は、次の記事を参考し手順通りにやれば、家庭菜園でも可能なので、ぜひ挑戦してみてくださいね。
まとめ【連作障害は対策より先に予防して防ごう】
トマト栽培には付きものの「連作障害」について、症状と対策をまとめてきました。
トマト農家である私は、毎年連作障害と戦っているので、今回紹介した対策方法は実用性のあるものばかりです。
連作障害は、「発症したら対策する」よりも、「発症する前に予防しておく」方が、症状が出にくく、トマトも育てやすくなります。
今回紹介した6つの対策の中でも、次の3つはすぐにできる簡単なことです。
- 育てる株数が少なければプランター栽培をしてみる
- 肥料を入れすぎない
- 必ず接ぎ木苗を植える
連作障害が本格的に発症する前に、この3つは予防策として実施し、長くたくさんトマトを収穫しましょう。
このサイトでは、他にもトマト農家の知識と技術が詰まった「トマトの育て方」に関する記事を更新しています。
家庭菜園でも参考にできる記事ばかりなので、トマト栽培で困ったことがあればいつでも遊びに来てくださいね。
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➡プランターでのトマトの育て方【誰でも必ず栽培できる1からの解説】
➡良質なトマトの苗の選び方【接ぎ木苗の重要性】