野菜の豆知識

自家受粉と他家受粉とは【それぞれの仕組みとメリット・デメリット】

植物が種を作るためには受粉する必要がありますよね。

中学校で習ったと思いますが、受粉には自家受粉他家受粉の2つがあります。

この記事では、植物に触れることが多いトマト農家の私が、次の2点について分かりやすく解説します。

  • 自家受粉と他家受粉のそれぞれの仕組み
  • 自家受粉と他家受粉のメリットとデメリット

この記事を読めば、自家受粉と他家受粉についてはもちろん、トマトが自家受粉をする植物ということも忘れなくなりますね!

自家受粉と他家受粉とは?

受粉は花粉がめしべに付くことで成立しますが、そのパターンは3通りあります。

そのパターンから受粉方法は2つに分けられ、自家受粉他家受粉と呼ばれています。

自家受粉とは?

自家受粉とは「同じ花」もしくは「同じ株」のおしべとめしべによって受粉する仕組みです。

同じ花の中におしべとめしべがある「両性花」が、その花だけで完了する受粉を「同花受粉」と言います。

そして、1つの花ではなく、同じ株の別の花の花粉での受粉を「異花受粉」と言います。

例を挙げると、トマトは自家受粉をする植物ですが、隣に植えてある株とは受粉せず1つの花の中におしべとめしべがあって受粉することができるのです。

他家受粉とは?

他家受粉とは、同じ株の中で受粉する自家受粉とは違い、「異なる株」と受粉します。

他家受粉の植物は、作った花粉が他の株のめしべを目指して様々な方法で移動していきます。

自家受粉よりも遺伝子の組み合わせのバリエーションが増え、自らの遺伝子を広く拡散させることができるのです。

植物の中には、自家受粉と他家受粉の両方できる植物も存在しています。

自家受粉のメリットとデメリット

自家受粉する植物の数は他家受粉する植物よりも少ないですが、大きなメリットを持っています。

それと同時に、自家受粉ならではのデメリットもあります。

自家受粉のメリット

植物が自家受粉をする最大のメリットは、「高確率で子孫を残すことができる」ということです。

むしろ他に他家受粉に勝るメリットはないでしょう。

そのため、種を作る種子植物の中では自家受粉よりも他家受粉で子孫を残す植物の方が多くあるのです。

メリットは少なくとも、子孫を残すということは植物にとって最も重要であり、この確率が上がるのであればそれは大きなメリットになります。

自家受粉のデメリット

自家受粉のデメリットとしては、次の2つが挙げられます。

  • 遺伝子組み合わせの多様性が低下して環境に対応しにくい
  • 近い遺伝子同士の配合は弱い個体が生まれやすい

自家受粉は同じ株で受粉して種を付けるため、子孫の遺伝子が変化しにくく、環境に対応するのが難しくなります

これによって、本来子孫を残しやすくなる受粉方法ですが、環境不対応で種の存続の危機に繋がることもあるのです。

また、動物と同様に、近い遺伝子同士の配合からは体の弱い個体が生まれてくることがあります。

そのため、子孫を残せるほど大きく育てない個体も出てくるでしょう。

他家受粉のメリットとデメリット

他家受粉をする植物は数多く存在し、植物にとってメリットの多い受粉方法です。

他家受粉も自家受粉同様にメリットとデメリットを紹介します。

他家受粉のメリット

他家受粉をするメリットは次の2つがあります。

  • 遺伝子のパターンが増え、環境に対応しやすい
  • 弱い個体の遺伝子が発現しない

自家受粉とは逆に、遺伝子を広く拡散させて子孫の遺伝子パターンが増えるため、環境が変化したときに対応しやすくなります

また、子孫の遺伝子には弱い個体の特徴が出にくく、正常な個体が生まれてきます。

植物が生き残るためには確実に受粉するだけではなく、これらのことが必要になってくるため、他家受粉をする植物の方が多く存在するのです。

他家受粉のデメリット

他家受粉のデメリットは次の2つがあります。

  • 大量の花粉を作る必要がある
  • 受粉の確実性が低い

他家受粉では花粉を遠くに飛ばして他の株と受粉する必要があるため、できるだけ多くの花粉を作り上げます

これは自らの負担になったり、花粉の量が少ないと受粉できる確率が下がったりします。

そして、風や他の動物の力を借りないと受粉できないことがあるので、受粉の確実性に欠けるのもデメリットの一つです。

花粉が出る時期にあまり風が吹かなかったり、虫や動物に運んでもらえなければそのまま受粉することがなく花は落ちてしまいます。

自家受粉と他家受粉のまとめ

このように、種を作る植物は2つの受粉方法を使ってそれぞれに適した方法で子孫を残し続けてきました。

私はトマト農家ですが、マルハナバチを使って自家受粉のトマトを受粉させています。

それぞれの受粉方法のメリットとデメリットは、野菜を作る農家にも重要なポイントであり活用することもできます。

自分で野菜を作るとき、「この植物はどっちだろう」と考えてみるのも面白くて育て方も理解できてきますよ。

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