「わざわざ時間をかけてトマトの苗を選ぶ必要があるのか」
「別にどんな苗でもトマトはトマトに変わりないしいいじゃないか」
たしかに、トマトの苗は大体のものが植えればトマトが実ります。
トマトを育てて収穫したい人なら、どんな苗を選んでも良いでしょう。
ですが、「トマトを上手く育ててたくさん収穫したい」という人には苗選びがとても重要になってきます。
この記事では、トマトを上手く育てるためには必須の「苗の選び方」を初心者にもわかりやすく解説していきます。
- トマトの苗選びの重要性
- 良質な苗の特徴
- 「実生苗」と「接ぎ木苗」の解説
- トマトの苗を購入できる時期と場所
- 農業の専門学校に通い、首席で卒業
- 現在は、約130戸のトマト農家が集まる大きな産地でトマト栽培
- 産地内でのトマトの栽培面積、収量は共に上位10%に入る
- 以上の経験を活かし、トマト農家の知識を詰め込んだ記事を執筆
トマトの苗選びを失敗するどうなるのか
トマトは、「苗半作」と言われています。
「植え付ける前の苗の時点で、その後の生育の半分は決まっている」ということです。
つまり、良質な苗を選ぶことができれば、トマト栽培は半分成功したようなもの。
反対に、苗を厳選することなく、「どれでもいいや」と質の悪い苗を選んでしまうと、100点のトマトを育てることはできません。
実際に、花の付いていない苗や、弱々しく育った苗を植えてしまうと、トマトの実がならなかったり、収穫期間が短くなったりしてしまいます。
初心者ほど、トマトの苗は良い物を選んで、スタートダッシュを成功させる必要があります。
次から紹介しているトマトの苗の選び方を参考にして、立派なトマトに育つ苗を選んでみてください。
トマトの苗の選び方① 良い苗の特徴
苗を選ぶ時には、次の7つのポイントに注視して選んでみてください。
特に、1つ目の「1段目の花」は最も重要で、その後の生育にも関してくるので必ず条件を満たしたトマトの苗を選びましょう。
- 1段目の花(蕾)が付いている★
- 葉に厚みがあり色が濃い
- 葉と葉の間が短く、徒長(弱々しく育つこと)していない
- 茎が太く、真っ直ぐ伸びている
- 子葉(双葉)が付いている
- 病害虫の被害がない
- ある程度生育が進んだ苗(4月上旬頃の小さい苗は避ける)
1段目の花(蕾)が付いている
トマトの苗を選ぶ際に、最も重要なのが1段目の花の有無です。
花か、咲く前の蕾が付いていれば問題ありません。
1段目の花は基本的に、本葉が7~8枚ほど付いた後に出てきます。
ただ、本葉の枚数が4~5枚ほどで花が付いていたり、本葉が9枚以上付いているのに蕾すら見えてこなかったりする苗は、蕾を作るタイミングが悪かった苗になります。
本葉の枚数が7~8枚で、その上に花がついている苗が理想です。
葉に厚みがあり色が濃い
葉の厚みと色の濃さは、十分な肥料が与えられている証拠になります。
葉が黄色っぽくて小さい苗は、肥料が不足していて人間で言う「栄養失調」の状態です。
肥料が不足することなく、葉っぱがしっかりと育った苗を選ぶようにしましょう。
葉と葉の間が短く、徒長していない
無駄に茎や葉が長く伸びることを徒長(とちょう)と言います。
トマトにとっての徒長とは、葉と葉の間が長くなることなので、間が短い苗ほど良い生育をしていることになります。
できるだけ葉と葉の間が短く、他の苗と比べて草丈(苗の背丈)が低い苗を選びましょう。
茎が太く、真っ直ぐ伸びている
これはわかりやすいと思います。
茎が細い苗よりも、太くてしっかりしている苗を買いたくなるのは当たり前ですよね。
また、トマトの苗は地際で曲がって伸びることがあります。
途中で曲がったりせず、真っ直ぐ伸びている苗を選びましょう。
子葉(双葉)が付いている
トマトの苗は、栄養が足りなかったり、元気がなくなったりすると、自ら葉を落としていきます。
双葉が付いていないということは、育苗時の生育状態が悪かったサインにもなるのです。
十分な栄養を得て育った苗を選ぶには、双葉が付いているかも注視して選んでみましょう。
病害虫の被害がない
当たり前のことですが、虫に葉っぱが食べられていたり、病気のような症状が出ていたりする苗は選びませんよね。
病害虫の被害はトマトを育てたことのない初心者でもよく見ればわかります。
そのコツは、「なんか変だなぁと思った苗は選ばない」です。
虫食い跡があったり、葉の色が一部不自然だったり、他の苗と違う苗は大体異常があるので、選ばないようにしましょう。
ある程度生育が進んだ苗
4月の上旬頃にはもうトマトの苗の販売が始まると思います。
ですが、この時期に急いで買ってはいけません。
小さな苗ばかりが並んでいるはずです。
トマトを育てたことがない初心者は、必ずある程度育って、蕾が大きくなっているか花が咲いている苗を選んでください。
トマトの苗は花が咲きかけた頃が植え替え時です。
小さな苗を植えると上手く育たないことが多いので、最低でも蕾が見えるくらいまで育った苗を選びましょう。
良質な苗の7つの特徴は以上になります。
次の章からは、トマトの苗を選ぶ際のもう一つのポイント、「接ぎ木苗を選ぶ重要性」について解説していきます。
トマトの苗の選び方② 必ず接ぎ木苗を選ぶ
トマトの苗の選び方、2つ目のポイントは、必ず接ぎ木苗を選んで買うことです。
ホームセンターや園芸店で売られているトマトの苗には、「実生苗(みしょうなえ)」と「接ぎ木苗(つぎきなえ)」の2種類があるのはご存じですか?
同じトマトの苗ですが、接ぎ木苗は実生苗の2~3倍ほどの値段で売られています。
ですが、数十本植える予定で苗代を抑えたい場合を除き、必ず接ぎ木苗を購入してください。
接ぎ木苗の解説と、接ぎ木苗を選ぶべき理由は次の通りです。
接ぎ木苗とは?実生苗との区別方法は?
トマトには「穂木」と「台木」と呼ばれる2種類の苗があります。
簡単に説明すると、「穂木」はおいしい果実を付ける品種で、「台木」は根の伸びが良く、土の中にいる病気にかかりにくい品種です。
接ぎ木とは、2つの苗を切って繋げることです。
すると、地上部は美味しい果実が付き、地下部は根っこが伸びやすく病気に強い、優れた1本の苗になります。
接ぎ木をした苗は、地際から数センチの所に切った跡があるので、地際をよく見れば実生苗と区別することができます。
なぜ接ぎ木苗を選ぶと良いのか
では、なぜ接ぎ木苗を選ぶと良いのでしょうか?
接ぎ木苗のデメリットとしては、先述したように、「価格が2倍以上になってしまう」ということでした。
ですが、トマトは接ぎ木苗にするメリットの方があまりにも大きすぎるのです。
具体的なメリットは次の通りです。
- 病害虫に強くなる
- 連作障害に強くなる
- 樹勢をコントロールできるようになる
- 収量があがる
トマトは何年も同じ畑で育てていると、土の中に病気が増えたり、虫が増えたりする、「連作障害」が起きてしまいます。
ですが、接ぎ木をしていれば根が強くなるので、病害虫による被害を抑えることができるのです。
もう一つのメリットに、樹勢をコントロールできるようになることが挙げられます。
樹勢の強すぎ、弱すぎを防ぎ、バランスが取れるようになります。
トマトは樹勢が収量に直結してくるので、結果的に収量増加のメリットもあるのです。
➡樹勢のバランスの取り方の詳しい解説【栄養成長と生殖成長のバランスの取り方】
つまり、接ぎ木苗を使えば、初心者でも病害虫に強いトマトが育てられ、よりたくさんのトマトを収穫できるようになるのです。
これを聞けば、100円の苗が300円になろうとも、接ぎ木苗を選んだ方が良いのは明らかですよね。
トマトの苗はどこで手に入る?
トマトの苗の選び方は理解していただけたかと思いますが、どこで購入できるか知っていますか?
一般的な購入先としては、「ホームセンターや園芸店」と「インターネット通販」の2つがあります。
ホームセンターや園芸店にはシーズンになると大体入り口付近に野菜や花の苗コーナーが設置されるでしょう。
インターネットでの購入は、Amazonや楽天でもトマトの苗が販売されており、普通では購入できない時期にも購入できるサイトもあります。
ですが、自分で苗を選ぶことができないので、良質な苗が送られてくるかは届いてみてからしかわからず、注意が必要です。
自分で良い苗を選んで育てたいのであれば、トマトの苗が販売されるシーズンに、店舗に足を運んで購入することをおすすめします。
トマトの苗が購入できる時期
ホームセンターや園芸店は、シーズンになるとトマトの苗が販売されるようになると先述しました。
トマトの苗は大体4月下旬~6月上旬の間がシーズンとなり、取り扱う量も多くなります。
この時期であれば小さすぎる苗も少なく、量も多いので、良質な苗を選んで購入することが可能です。
ですが、この時期は、トマト農家が植えきれずに残った苗が並んでいることがあり、植える最適な状態を逃している苗もちらほら。
質の悪い苗に騙されることなく、紹介した良質な苗の選び方を実践して、自分で「これだ!」と思う苗を選んでみてくださいね。
まとめ【トマトは必ず良質な苗を選ぼう】
トマトの苗選びの重要性は理解していただけたでしょうか?
トマト農家の私も、苗の質には気を付けてトマトを育てています。
苗の質が良い年は、植えてからの生育が良く、満足いかない苗の年は、やはり最初の生育がどうしても遅れてしまいます。
家庭菜園でも同じことが言えます。
- 良質な苗の7つの特徴を満たす苗を選ぶ
- 数株程度の栽培であれば、必ず接ぎ木苗を選ぶ
以上の2つを守ってトマトの苗を選べば、家庭菜園でもトマト農家が作るようなトマトを収穫することが可能になります。
「同じトマトの苗だからどれでもいいや」
なんて思わず、上手にトマトを育ててみたければ実践してみてくださいね。
私のサイトでは、他にもトマト農家の知識を詰め込んだ記事を公開しています。
トマトの育て方で迷ったら、いつでも遊びに来てください。
➡【トマト農家が伝授するトマトの育て方一覧】
➡【プランターでのトマトの育て方】