「トマトの元気が無い」「全体的に黄色っぽい」
などは、トマトの窒素欠乏による代表的な症状です。
窒素はトマトの生育や収穫量を左右する非常に重要な成分であり、窒素欠乏はトマトにとって致命的な症状になります。
本記事を読めば窒素欠乏を改善することができ、トマトの収穫量も格段に増やすことができるので、手遅れになる前に読み進めて内容を実践してみてください。
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トマトの窒素欠乏による症状
トマトの生育には窒素が必須であり、窒素が不足すると様々な欠乏症状が出ます。
具体的な窒素欠乏の症状は下記の通りです。
窒素欠乏の症状
- 茎が細くなる
- 葉っぱが小さくなる
- 葉や茎の色が薄くなる
- 生長点の幼葉が上を向く
- 花が生長点付近で開花する
- 実が大きくならない(つかなくなる)
窒素欠乏により上記のような症状が出てトマトの元気が無くなることを、「樹勢が低下する」と表現します。
トマトの樹勢が低下してしまう窒素欠乏の症状について、一つずつ順に詳しく解説していきます。
茎が細くなる
トマトは窒素欠乏で樹勢が低下すると、これから伸びてくる茎が細くて弱々しくなってしまいます。
すでに成長が止まっている下部の茎の太さは変わらないので、生長点付近や木の上部の茎の太さを見て判断します。
葉っぱが小さくなる
茎が細くなるのと同時に、出てくる葉っぱも小さくなってしまいます。
茎の太さと同様に、すでに伸び切った下部の葉っぱにはあまり変化がなく、新しい葉っぱに変化が出てくるでしょう。
葉や茎の色が薄くなる
トマトは窒素が多いと葉や茎の色が濃くなり、不足していると薄くなる傾向にあります。
窒素が欠乏している状態だと明らかに緑色が薄くなり、トマトの樹全体が黄緑のような色になります。
生長点の幼葉が上を向く
トマトが成長していく頂部である生長点付近には、これから出てくる小さな葉が見えているはずです。
十分な窒素があるときには幼葉が少し巻いているような形になりますが、窒素が欠乏すると上に向かって真っすぐ伸びたような状態になります。
花が生長点付近で開花する
窒素が不足して樹勢が低下してくると、トマトは花をできるだけ早く開花させようとします。
トマトの花が満開(3花以上)になった時、花と生長点との距離が近ければ近いほど窒素欠乏によって樹勢が低下していると言えるでしょう。
十分な窒素があり、樹勢も安定している場合には、生長点から10~15㎝程度の位置で花が満開になります。
実が大きくならない(つかなくなる)
ここまでは窒素が不足してくると出る症状でしたが、そのまま窒素欠乏が続くと実が育たなくなってしまうのです。
実が大きくならないだけならまだしも、窒素欠乏を改善できないといずれ何も実がならなくなってしまう可能性も。
そうならないためにも、前述してきたような窒素欠乏の症状が見られたら、まずは原因を突き止めることから始めましょう。
トマトに窒素欠乏の症状が出る原因
前章で挙げたような症状が多く当てはまった場合、窒素欠乏によって樹勢が低下していると判断できます。
続いて、なぜ窒素欠乏の症状が出てしまったのか判断するために、5つの原因を挙げていきますね。
肥料で与える窒素の量が少ない
窒素欠乏の一番の原因と考えられるのが、「そもそもトマトが必要とする分の肥料を与えられてない」ということです。
トマトの生育には「窒素・リン酸・カリウム」の3要素が多く必要であり、特に不足しやすい成分でもあります。
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土作りができていない
窒素が含まれた肥料を与えているのに窒素欠乏になる場合は、窒素を蓄えられない土で育てている可能性があります。
初めて作物を育てる畑や、土質が赤土や砂状の畑では、土が窒素を多く蓄えられず流れ出てしまっている場合が多いです。
土壌の酸性度(pH)が高いor低い
土の酸度はpH(ピーエイチまたはペーハー)という値で表され、トマトが根から吸う土壌養分の吸いあげやすさに関わってきます。
トマトに適正なpHは6.0~6.5であり、この範囲の土壌酸度だと窒素の吸い上げが良くなり、大きく外れるほど窒素が吸いにくくなってしまうのです。
土壌のpHを測るための専用の計測器は安価(Amazonで約3000円)で購入できるので、一度畑の酸度を測ってみるのがおすすめですよ。
未熟な有機物を入れすぎた
畑の土作りのためには、堆肥や藁などの有機物を入れるのが基本ですが、未熟な有機物を多く入れるとトマトが窒素を吸いにくくなってしまいます。
堆肥や藁などの有機物は、よく発酵・分解させて畑に入れるのが良く、未熟なものを大量に入れた場合にはアンモニア障害などが発生します。
水不足
トマトは窒素などの土壌養分を単体で吸い上げるのではなく、水と一緒に吸い上げます。
肥料はしっかりあげていても水の量が少なく土が乾いている場合には、上手く窒素などの土壌養分を吸い上げられないのです。
トマトに窒素欠乏の症状が出た時の対策
トマトに窒素欠乏の症状が出る原因について前述したので、まずは窒素欠乏の原因を突き止めて改善していきましょう。
原因を突き止めて改善できた後は、窒素欠乏によって低下してしまった樹勢を元に戻す対策をしていきます。
窒素欠乏の症状が出た時にする対策は、主に下記の2つです。
- 追肥で窒素を追加する
- 摘果をする
追肥で窒素を追加する
窒素が不足して窒素欠乏になっている場合、一番にするべきことは追肥による窒素の補充です。
トマトを上手く育てるためには追肥が必須であり、窒素もしっかりと定期的に追肥する必要があります。
追肥の正しいやり方は下記の記事にまとめられているので、まずは正しい追肥方法を確認してみてください。
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トマトが窒素欠乏になったときにぴったりのおすすめ肥料は、この次の章で紹介しています。
摘果をする
窒素欠乏により一度樹勢が低下してしまったら、追肥だけで盛り返すのはなかなか難しいです。
なので、追肥で窒素を追加するのとあわせて、摘果によってトマトの樹にかかる負担を軽減してあげましょう。
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トマトの窒素欠乏対策に最適なおすすめ肥料
前章で、トマトが窒素欠乏になったら追肥をしなければならないと記述しましたが、どんな肥料でもいい訳ではありません。
しっかりと窒素が含まれていて、トマトが樹勢を盛り返すことができる肥料を選ぶ必要があります。
条件を満たし、僕が窒素欠乏の対策に一押しするのは、トマトを元気付けることに特化した肥料である「住友液肥2号」です。
住友液肥2号はトマトに重要な「窒素・リン酸・カリウム」の3要素しか含まれておらず、余分なものは何も入っていません。
その中でも窒素の含有量が最も多く、トマトの窒素欠乏を改善して樹勢を強めるためには最適の肥料と言えるでしょう。
プロのトマト農家の間でも現役で活躍している肥料なので、効果の信頼性はバッチリです。
ただし、3つの要素以外は何も入っていないので、窒素欠乏が改善したら他の要素も入った肥料も使っていく必要があります。
トマトを窒素欠乏にしないための事前対策
トマトに窒素欠乏の症状が出たときは、ここまで解説してきた原因と対策の内容でなんとか抑えることができるでしょう。
しかし、それだけでは窒素欠乏の対策としては足りません。
次作からは、窒素欠乏が発症しないような栽培環境にする必要があります。
窒素欠乏にならないための対策を3つ紹介するので、2度と発症させたくない人はできることから始めてみてはいかがでしょうか。
窒素が含まれた肥料をこまめに追肥する
窒素を不足させないために窒素を与えるのは当たり前ですが、こまめに与えるのがポイントです。
特に、窒素を蓄えておけない土には、一度に多く与えるより少量多回数に分けて与えるとトマトが窒素を吸いやすくなります。
少量多回数に分けて肥料を与える重要性や方法については下記の記事が参考になります。
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毎年畑に有機物を入れる
肥料を与える以外にトマトに窒素を効率よく吸わせるには、窒素を蓄えておける肥沃な土作りをすることが挙げられます。
土壌は堆肥や藁などの有機物を毎年少しずつ入れることで、微生物の働きによって良い土になっていきます。
前述したように、未熟な有機物では害が出ることもあるので、下記に紹介するような完熟した堆肥などを選んで使いましょう。
害が出ない完熟堆肥
土壌改良材を使って適正なphにする
土の酸度を専用の計測器で測った際にpHが6.0~6.5から大幅にずれていた場合、窒素の吸い上げも悪くなるので土壌改良が必要です。
一般的に、pHを上げてアルカリ性に近付けるには石灰(カルシウム)を、下げて酸性に近付けるには硫安や過リン酸石灰といった肥料を施用します。
次作のトマトを植える前に、土に必要な資材を施用して混ぜ込んでみてください。
pHを調節する土壌改良材
【pHを上げるカルシウム肥料】
【pHを下げる過リン酸石灰肥料】
窒素欠乏の改善後は窒素過多に注意
トマトの窒素欠乏は、ここまでの内容を実践することができればきっと解決することができるでしょう。
しかし、窒素欠乏を改善した後に注意しなければならないことがあります。
窒素の与えすぎや摘果後の低負荷による、窒素過多や強樹勢です。
窒素欠乏になったときは窒素を与えて摘果をすることで改善されますが、やりすぎると今度は窒素が多すぎる窒素過多になってしまいます。
トマトが健康的な緑色になって元気が出てきたら、追肥量や摘果を見直して、窒素過多にならないように気を付けてくださいね。
【まとめ】トマトの窒素欠乏は様々な観点から改善しよう
トマトは窒素欠乏の症状が出た場合、その原因は一つとは限らないので、改善方法も様々です。
窒素欠乏を改善するためには、下記の手順で対策をしていきましょう。
- 窒素欠乏の原因を明らかにする
- 原因に沿って改善しながら追肥と摘果
- 次作以降で発症させないための事前対策
上記のように、【原因究明➡対策➡事前対策】と進めていくことで、窒素欠乏を改善しながらトマトが育ちやすい環境を作ることができます。
改善する際には、本記事の内容がそのまま使えて役立つことばかりなので、窒素欠乏に悩んだときの参考にしてみてください。